コラム
2026.02.17
Hermès(エルメス)とは?
エルメス(HERMÈS)の沿革
**「最高峰の馬具製作」**から始まる物語です。
「職人技の継承」を何よりも重んじ、現在でも機械による大量生産を行わない稀有なメゾンです。その気高い歴史を紐解きます。
1. 創成期:ナポレオン三世も愛した馬具工房 (1837–1879)
* 1837年: ティエリ・エルメスがパリに高級馬具工房を創業。
【革新のポイント】
当時の馬車社会において、エルメスの鞍(くら)や轡(くつわ)は「丈夫で美しく、馬に優しい」と評判になり、ナポレオン三世やロシア皇帝など、世界の王侯貴族を顧客に持ちました。
2. 転換期:馬車から自動車へ (1880–1920)
* 1880年: 2代目シャルル=エミールが現在の本店所在地(サントノーレ通り24番地)に店舗を移転。
* 1900年: 馬具を入れるための大型バッグ**「オータクロア」**を発表。これが後のバーキンの原型となります。
* 1920年代: 3代目エミール=モーリスが、自動車時代の到来を予見。「馬具の技術をバッグや財布に応用する」という大胆な方針転換(事業多角化)を行いました。
【ファスナーの導入】
エミールはカナダで軍用車の幌に使われていた「ファスナー」に着目。フランスで初めてバッグ(ボリード)に採用しました。
3. 伝説の誕生:グレース・ケリーとジェーン・バーキン (1930–1984)
* 1935年: 「サック・ア・クロア」を発表(後のケリー)。
* 1937年: シルクスカーフ**「カレ」**の第一号が誕生。
* 1956年: モナコ王妃グレース・ケリーが妊娠中の腹部をバッグで隠した写真が雑誌に載り、一躍ブームに。彼女に敬意を表し**「ケリー」**と改名されました。
* 1984年: 5代目ジャン=ルイ・デュマが、飛行機で隣り合わせた歌手ジェーン・バーキンのために**「バーキン」**を製作。
4. 現代:芸術性と職人魂の融合 (1990–現在)
* 2000年代~: マルタン・マルジェラやジャン=ポール・ゴルチエといった天才デザイナーを起用し、伝統に前衛的なエッセンスを加えました。
* 2015年: Apple Watch Hermèsを発表。デジタルの世界にも職人技を融合。
エルメスを象徴する「4つのこだわり」
| 要素 | 特徴 | 理由 |
|---|---|---|
| クウジュ・セリエ | 独特の「サドルステッチ」 | 馬具由来の縫法で、一箇所切れても解けない。 |
| オレンジボックス | 鮮やかなオレンジ色 | 第二次大戦中の資材不足で、残っていたこの色の紙を使ったのが始まり。 |
| デュックとタイガー | ロゴマーク | 従者(デュック)と馬車、馬が描かれ「主人はお客様自身」を意味する。 |
| 職人による一貫製造 | 1つのバッグを1人で | 効率より品質を優先。担当した職人の刻印が入る。 |
エルメスの歴史は、時代の変化に合わせて**「馬具からバッグへ」と姿を変えつつも、「職人の手仕事」という核**を絶対に曲げなかったプライドの歴史です。